英語で本三昧

英語の朗読を聴いて楽しんでいます。 

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by Khaled Hosseini


Kite Runnerの著者、Khaled Hosseiniの2作目、2人のアフガニスタン女性を描いた物語を読みました。 私のまわりとは全く違う国の過酷な歳月を、彼女たちがどう生きていくのか、途中から、読むのがやめられなくなりました。


 


Mariamはアフガニスタンの古い町の資産家の娘として生まれました。 
彼女の母は、もとは父親の家の使用人で、娘を産んでも妻の一人にはなれず(イスラム教徒だから4人の妻まで持てるのだけど)、人目のない町のはずれの小屋に追いやられ、娘と2人で暮らしています。 週一回訪ねてくる父を慕う娘に、母は、女の一生は忍耐だ、期待などするな、おまえは“harami”で父にとってはいらない人なんだ、と言い聞かせます。


父に踏みにじられ、突然母を失い、15歳で30歳も年上の夫のもとに嫁がされ、そこでもいらない人扱いされ続けて暮らしていたMariamは、長い孤独な生活の後、初めて自分を大切にしてくれる友人にめぐりあいます。 
しかし、その友人Lailaの人生も彼女に劣らず辛く、2人の同居生活も惨めです。 出口のない絶望的な毎日が続くなかでも、ささやかな喜びを見つけ、支えあって暮らす2人の住むカブールに、タリバンがやってきます。 やっと平和と秩序がやってくると、カブールの人々は大歓迎でタリバンを迎えますが・・


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winds of changeより


前作では男の子が主人公で、作者自身か、身近な家族の体験を語っていると思わせるような、切迫感があったのですが、この作品は作者が一歩下がり、アフガニスタンの女性を淡々と描いている印象がありました。 でもタリバンがやってきて、彼女たちの人生がさらに暗転していくと、登場人物はぐいぐいと現実感をまし、彼女たちの声が聞こえてくるような感じがしました。 
そして、最後にMariamが物語から退場してしまってから、いっそう彼女の声や顔がうかび、彼女の強い意思が伝わってくる、そんな読後感でした。


こんなに辛い物語に、不謹慎な言い方のような気もしますが、Khaled Hosseiniはうまいエンターテイナーだな、と前半を読みながら感じていました。 アフガニスタンについてよく知られた逸話がうまくエピソードに挿入され、読者の心をつかみながら話しが進むような気がしました。
たとえば、少女時代の幸せなLailaが父と友人と、はるかバーミヤンを訪ね、洞窟をよじ登り、大仏の背後からアフガニスタンの大地に見入るシーンがあります。 私の頭の中には、青い空と、黄土色の崖と、大仏、そして3人の鮮やかなイメージが広がります。でも、心の隅ではちょっと、バーミヤンが出てきたことが唐突で、作り込みすぎているような気もしました。


bamiyan2.jpg
世界遺産Bookより


アフガニスタンがあまりに辛い歳月を送った国だけに、その不幸な歴史を、ベストセラーにしてしまうことに、ちょっとだけひっかかる気持ちがありました。でもこの作品を読み終わって、アフガニスタンの人々の力強い生き方が、私の頭の中に印象深く残っているのを感じ、この本を読んでよかったなと思いました。


アフガニスタンのように、小さくて、苦難の歴史をもち、資源があるわけでもなく、ほとんど知られない国が、Khaled Hosseiniのように、読ませる物語を作ることができる作家をもったことは、幸運だと思います。私自身、彼の2作を読んでいなければ、アフガニスタンと聞いて、迷彩服の英米軍人が、民族服を着たテロリスと戦う、黄褐色に乾いた国というイメージしかもてなかったと思います。


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UN Chronicleより


作者がこの作品について語るビデオを見ると、27年前に逃げだした祖国を慕い、その国の美しさと、過酷な歴史を暮らした人々の姿を書きたいという、祖国への強い思いがこの物語を書かせたのだと感じました。


自分をはぐくんだ親や祖父母が暮らした国への懐かしさ、幼いころに親しんだ風土と文化への愛着、まわりの人々への思い。どれほど過酷な生活もたらす国だとしても、祖国は、切なく恋しいものなのかもしれません。 この物語の中でも、アフガニスタンを捨てて逃げていく人々は、迷って、迷って、逃げていきます。 


イギリスにも、難民、移民という形で苦難な祖国を離れて暮らす多くの人がいます。 ビルマの民主デモや(イギリスでは現政権を否定する意思をこめてミヤンマーをまだこう呼んでいます)やパキスタンの戒厳令など、最近のニュースでも、祖国に思いをはせるイギリス在住の人々を何度も目にしました。日本を祖国とする私とはまったく違う、祖国への切迫した祖国愛があるのだと感じました。


それにしても、イスラム教は、女性にあまりに酷薄に思われ、どうしてこれほど多くの世界中のイスラム教徒の女性たちが、その信仰を持ち続けていられるのか、私には不思議に思われてなりません。 タリバンはイスラム教を代表しているわけではなく、過激派だとわかっているけれども、この物語の女性のような生活はあまりにひどすぎます。
イギリスに住んでいると、イスラム教徒はごく身近な人々で、親しい友人にもパキスタンの家族がいます。でも、イスラム教は今イギリスでは非常にセンシティブで、面と向かって話題にしてはいけないような雰囲気があり、個人的に話題にするのはとても難しい感じがします。 


一方で、ここ数日のニュースでも、イスラム原理主義のテロにかかわる話題はひっきりなしです。タリバンがイギリス人のイスラム系の子どもや少年をリクルートする動きが活発だとか、イギリスでテロが起きる可能性は増大しているなどなど、この物語の世界が、決して遠い彼方の他人事ではなく、われわれの生活にもつながっているのだと、感じることが増えています。


この本を読んで、その主題を超えて、いろいろなことを考えてしまいました。比較的読みやすい英語で、Page Turnerなので、引き込まれてぐいぐい読み進めることができました。

コメント

Kite Runnerは約2年前に読みました。電車の中で読んでいたのですが、途中、涙がこらえられなくなって、隣の人に怪しまれないようにするのが大変だったことを覚えています(笑)。この作家は、ストーリーテラーとしての才能がありますよね。私もこの作品がなければ、アフガニスタンについては本当に限られた情報による偏ったイメージのまま、それほど関心を持たずにいたかもしれません。

そんなアフガニスタンの興味から、TVでアフガニスタンの女性の生活を撮ったドキュメンタリーを見ましたが、まったく希望を見出せないアフガニスタンの女性たちの置かれている状況に、胸が痛みました。Dillさんが読まれた本は、そんな女性たちの生活が描かれているのですね。

イギリスに住んでいると、イスラム教への正しい理解というのが大切であることを最近感じます。ややもすると、無関心・無知のまま、偏見を増長している自分がいますが、少しずつでも本や実際にお会いする人たちを通して、正しい理解を深めていきたいなぁと思うこのごろです。

michiさん、

私もこのごろテレビでイスラム関係の番組が多くなったような気がします。 michiさんが見られたドキュメンタリーは見逃したようですが、チャンネル4のドラマ、Britsは覧になりましたか? 
娘といっしょに見て、イスラム教徒の人たちがどうして怒るか、ちょっとだけわかったような気がしたね、と言い合いました。でも全体としては、とても恵まれたイギリス人の女性が、自爆テロリストになってしまうあたり、説得力に欠けていたと思うのですが・・・
今朝のBBC Radio 4 Women's hourもアフガニスタンの女性がテーマでした。
この本をよんでから、イスラム教について、もうちょっとよく知りたいなと思ったせいでしょうか、今まで、聞き飛ばしていた番組が、急に興味深くなりました。
そうそう、ロンドン近郊は今日が初霜でした!いよいよ冬ですね。

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Dill

Author:Dill
イギリスのロンドン郊外に住んでいます。 
本は大好き。読む本がなくなると落ち着きません。
とうとうまわりに日本語の新しい本がなくなってしまったので、英語の本を楽しみたいと思っています。

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