英語で本三昧

英語の朗読を聴いて楽しんでいます。 

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ミス・ポターから見えるビクトリア時代 その4



Miss Potterの映画で主人公のBeatrixNormanの恋は、彼女の両親の猛反対をうけます。2人の家庭は身分違いだったのか・・・前の記事の続きです。


Norman-death.gif



Beatrixが描いた日暮れのBedford Square (Normanの死後描いた彼の家)


イギリスでで”Upper Class” 「上流階級」と呼ばれるのはごく限られた由緒正しき名家だけで、Beatrix Potterの家もかなりリッチだけど、”Upper Middle Class”と呼ばれます。 ビクトリア時代のUpper Middle Classは、日本語のイメージの「中流」とはずいぶん違って、生活のために働く必要がないほど、お金持。紳士たるもの、生活のために働く(こういう人がTradesman)よりは、文化活動に励むことがふさわしいと考えられていたそうです。


そういえば、ビクトリア時代は、大英帝国の絶頂期、多彩な才能をもった紳士が文化面で大活躍した華やかな時代でした。 


進化論を唱えて、世界中をびっくりさせ、ひどいバッシングを受けたCharles Darwinの有名な種の起源が書かれたのは、Beatrixの生まれる数年前。


20071010073132.jpg


Beatrix15歳のころ、家のすぐ近くに、華麗な建物の自然科学の殿堂Natural History Museumが開いたし、恐竜の化石が人々の興味をかきたてたのもビクトリア時代。



Beatrixの家からちょっと郊外の、王立植物園Kew Gardenには世界中の植物を収集した巨大な温室がつくられ、イギリス紳士たちは、珍しい植物をもとめて世界中の探検に出かけたし。



Beatrixもよく行ったKew Gardensのビクトリア時代の巨大な温室


遺跡の発掘が流行していて、エジプトでツタンカーメンの墓を発見したHoward Carterは、Beatrixと同世代。


howard_carter_egyptair.jpg


こんな知的興奮にあふれたビクトリア時代、Beatrixの父親Rupertも、文化遊人のように暮らしていたようです。最新技術の写真に凝っただけでなく、晩年、湖水地方の詩人のサインを収集する趣味ももっていたとか。 実務的な仕事をする人とは違うという自負があったのでしょう。


Beatrixの母親は、社交生活が大好きだった人で、Beatrixが適齢期になった頃は名家の息子と結婚させたいと張り切っていたようです。 両親と結婚について意見があわないBeatrixに、弟は、母親のSocial Ambitionにつきあう必要はないと言ったと、伝記にあります。


この映画の母の推薦の花婿候補たちは、どうしたって結婚する気が生まれようもない変な男性たちですが、Miss Potterの原作によると、SirとかLadyと呼ばれる、貴族の称号のある家庭の息子だったりするようです。(原作では、Beatrixがあんな羊に豚に馬にそっくりの若者とは結婚できるはずないわ、と回想したと意地悪に書いてありますが、映画ではちゃんとそんなイメージになってますね) 成り上りの娘に、名家の息子を求めれば、なんとも冴えない男性しか見つからない・・・これがBeatrixの母が言う、Suitable young men of your class の花婿候補でした。


 20071010074925.jpg


 Miss Potterより- 花婿候補 (馬にそっくり?)




一方Warneの家は、彼らの父親が印刷業を興し、3人の息子が実業を引き継いでいる家庭です。 Warne家の息子たちが、毎日仕事をして暮らしているからBeatrixの両親はNormanTrademanと呼び、結婚相手として認められないと言い張ったのです。


でもWarne家もそれなりに大きな邸に住んで、豊かな生活を送っているし、生活水準に大きな違いがあるとは見えません。 Beatrix自身も、出版は紡績業と同じぐらい“Clean” Tradeだと、従姉妹への手紙に書いているし、客観的なそんなに大反対しなくてはいけないほど身分違いだったわけではないようです。 


むしろ、そろそろ年老いてきた両親が、家の雑用を一手にひきうけて、ゆくゆくは老後の面倒もみてくれそうな娘を手放したくなかったのではないか・・・と皮肉に書いている本もあります。



WarnesWeb.gif
自転車に乗るWarnes兄弟姉妹 左はじがNorman


ちなみに私の印象では、古風で格式ばって、それを嫌ったらしい弟(親が大反対しそうな相手とこっそり結婚していた・・・)も早々に家を離れ静かだったPotter家に対し、兄弟が多く、結婚した家族も頻繁に出入りするにぎやかで飾らないWarnes家の家風があわなかった、というのも反対の大きな理由だったように思います。でも、ロンドンの家の生活がちっとも好きではなかったBeatrixにとっては、にぎやかで家族的、しかもモダンなWarnes家の兄妹たちに強く引き付けられたのだと思います。

コメント

Dillさん

こうして、時代背景について詳しく調べてみることって、作品を理解する上で、とても大切ですね。Dillさんのブログを読んで、そのあとに本を読んでみると、それまで見落としていた部分がふと立体的に表れて、感動しました。このあいだまで読んでいたIan McEwanのAtonementにNurseryという言葉がでてきたのですが、これがまさしく、「子ども部屋」ですし、また身分違いの恋もテーマに含まれています。

Natural History Museum、こんなに立派な建物なのですね。写真を拝見して、鳥肌がたちました。

Miss Potter, それまであまり関心がなかったのですが、Dillさんのブログを拝見してから気になって仕方ありません。DVDになったら(なっているのかな?)チェックしなくちゃ!

ビクトリア時代ってなんて素晴らしいんでしょう!Dillさんの記事でどんどん想像が膨らんでゆきます。身分や格にこだわった時代ではあったけれど、そこから生まれる文化や恋のドラマは、そういう抑圧がなかったら花開かなかったかもしれませんね。それにしてもNorman、ハンサム~♪

michiさん、 nikoさん、
娘の夏休みの宿題に便乗した記事にお付き合いくださって、ありがとうございます。 
michiさん
この映画自体は、さっと見るには楽しいけど、観客サービスがやや過剰なので、michiさんにお勧めするにはちょっとためらうのですが、DVDになってます。
Natural History Museumは行くたびに見とれる面白い建て物です。ビクトリア時代の豪華絢爛な情熱がほとばしり、摩訶不思議な動物が壁に彫られてます。しかもSouth Kensignton界隈はビクリア時代の家並もかなり残っているので、散歩に最適です。こちらは、◎のお勧めです。
Atonementはmichiさんの記事を読んで、とても気になっています。2つの大戦の間のイギリスも、はかなげで魅力的な時代ですよね。

nikoさん
私は、Beatrix Potterという女性にはとても惹かれます。 自伝を読むと、こだわりやで辛口だけど、かわいいところもあって、素敵な女性です。晩年は田舎の弁護士さんと結婚して、養豚のエキスパートとして田舎町で活躍します。
彼女の伝記を読んで、もう一度この映画の題材となった恋と悲劇を振り返ると、それこそ、光と闇の間を激しく行きかった彼女の人生に興味がつきません。

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Dill

Author:Dill
イギリスのロンドン郊外に住んでいます。 
本は大好き。読む本がなくなると落ち着きません。
とうとうまわりに日本語の新しい本がなくなってしまったので、英語の本を楽しみたいと思っています。

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