英語で本三昧

英語の朗読を聴いて楽しんでいます。 

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ミス・ポターから見えるビクトリア時代 その3



「英国の子ども部屋が、特別魅力的な響きを持つのはやはりその児童文学の名著の数々と無縁ではあるまい。ピーターパンだって、ナルニアだってすべては大人の干渉とは無縁の子ども部屋から始まるのだから。
とりわけヴィクトリア時代の子ども部屋、と考えるだけで血肉がざわざわとしてくる。
「春になったら苺を摘みに」 梨木香歩  新潮文庫


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Beatrxi 11歳の頃 最初のGoverness Miss Davidsonと 1877年


Beatrix Potterも、子ども部屋でひとりきりで長い長い時間をすごしながら、小動物と友達となり、その様子をスケッチし、空想にひたって、Peter Rabbitの世界を作り出しました。 6歳年下の弟が、6歳(!この歳で!)で学校の寄宿舎に行ってしまったのですから、その時にBeatrix12歳、それからずっとTeenagerの毎日の大半を一人で子ども部屋ですごしました。 家庭教師が通ってきて、勉強をみてくれたものの、ほかの時間は一人で絵を描いて過ごすことが多かったそうです。


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1876年 (10歳?) スケートとソリをするうさぎ


それにしても、子ども部屋にほとんど一人きりで閉じこもって、外にはたまにしか出かけない、親戚やまわりの大人以外に友達がまったくいないTeenagerの女の子、というのは、ずいぶんと孤独だったことでしょう。石井桃子さん(ピーターラビットシリーズの日本語訳をしています)は、Beatrix Potterは子ども部屋に閉じ込められて育ったようなものだ、とまで書いています。


この時代、子ども部屋はNurseryと呼ばれていました。Beatrixの家では、3階にあったそうです。小さい頃のBeatrixは、弟と2人で、スコットランド人のナニーに付き添われて子ども部屋で一日を過ごしました。


2人は、朝と寝る前に下に降りていって両親に行儀よく挨拶したり、外の新鮮な空気を吸うためにナニーにつきそわれて散歩に行く以外はほとんど子ども部屋で過ごし、食事も子ども部屋で2人で食べたようです。 両親は、近所の子どもと遊ぶのも嫌ったと伝記に書いてあります。 Potter家の住んでいたBolton GardensUpper Middle向けの家が並んでいた地域なのに、近所の子どもと遊ばせないというのは、Beatrixの両親はずいぶんと誇り高く暮らしていたのでしょうか。


当時のイギリスの裕福な家庭では、子どもたちは幼いときは子ども部屋でナニーに見守られて遊び、やがて家庭教師について勉強し、男の子は7歳や11歳でPublic Schoolという私立の男子校の寄宿舎に入りました。 こうした学校で紳士の卵として学業とスポーツに励み、将来の紳士たちと、Old Boy’s Networkを作りました。 



男の子はこんな学校へ・・・
(うちの近所の名門男子校 Dulwich College )



一方女の子は、ずっと家で家庭教師や母親について勉強をし、教養(刺繍、絵画、音楽、フランス語など・・・)を身につけ、年頃になれば親の目にかなう、ふさわしい男性に出会って結婚する、ということが期待されていたのです。


Beatrixはひとりぼっちなのを嫌がらない、恥ずかしがりやの娘だったそうですが、それでもこのロンドンの家の子ども部屋が楽しくなかったのか、1940年にこの家がドイツの空襲で壊された時、”My unloved birthplace”と言っていたとか。


catapiraw.gif
1875年 9歳(?)スコットランドで


ロンドンの生活が窮屈だっただけ、夏に3ヶ月近く、スコットランドや湖水地方の家を借りて過ごす生活は、開放感に満ちて、楽しい日々だったようです。動物好きの姉・弟は、うさぎ、ハリネズミ、ねずみ、毛虫、昆虫のような小さい生き物をこっそり部屋にもちこみ、観察して絵に描きました。 自然科学に興味が深かった2人は、動物の死骸から骨格標本を作ったりもしたそうで、一度などは、両親には秘密で、きつねをゆでて骨格標本を作ったと伝記に書いてありました。(!)

コメント

イギリス文学にまつわるいろんなお話、楽しく読ませていただいています。Beatrix Potterの幼い頃の絵にはびっくり。9歳や10歳で、もうこんなに完成度の高い絵を描いていたんですね。ピーターラビットの緻密な筆も納得がいきます。きつねをゆでたという話・・・うーん、びっくりです・・・nurseryってもともと「子ども部屋」って言う意味だったのですね。

michiさん、
読んでくださって、ありがとうございます。
娘の歴史の宿題のお付き合いからはじめたけど、自分でも興味があったので、なんかかんか書いてしまいます。
きつねをゆでる、って本当にびっくりです。ウチの近所にはきつねがいいぱいいて、サンダルを食べるし、Droppingを落としていくやら、にくらしいと思うけど、けっこう大きいですよね。
どうもBeatrixって一筋縄ではいかない、意思の強い女性だったようです。伝記を読むと。。。

わあ!ブログを再開されていたんですね!(気がつくのが遅いですね…すみません)またDillさんの文章が読めるので、とてもうれしいです(^^)。私はロンドンの家には行かなかったのですが、この夏湖水地方にあるHill Topのポターの家を訪れました。それぞれの部屋の家具や小物や器、庭の花々や畑を見ていると、彼女が頑固なまでに守り続けたものがあまりにも美しいので、私も自身の生活の行く末を考えなおしたほどでした。映画しか見ていないのですが、かなわない願望だとは思いますが、同じ時代に生きていたら友達になりたかっったなあなどと、思ってしまいました…。Dillさん、お帰りなさい!また楽しみにしていますね。

nikoさん、
ええ、そうですね。 ポターがかたくなに守ろうとしたイギリスの美しさ、とりわけ季節のうつろいの鮮やかさにはっとすることが、しょっちゅうあります。木が見せる表情の美しさや、草草のみずみずしさや、農場ののんびりした風景・・・自然に囲まれることの幸せを改めて感じます。
昨日の晩も、隣の空き地に咲き乱れる月見草と、大きく広がる闇空にさぜざえと輝く月に、うっとりしました。(月見団子を作ればよかった、ともおもいましたが。。。笑)。
私の住むあたりに残る森もナショナルトラストが管理しています。Potterについて知ってから、National Trustのマークを見るたびに、彼女のことを思い出します。
こちらこそ、これからもよろしくお願いします。

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Dill

Author:Dill
イギリスのロンドン郊外に住んでいます。 
本は大好き。読む本がなくなると落ち着きません。
とうとうまわりに日本語の新しい本がなくなってしまったので、英語の本を楽しみたいと思っています。

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