英語で本三昧

英語の朗読を聴いて楽しんでいます。 

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日本では石井桃子さんの翻訳で「銀のスケート」として、
岩波少年文庫から出ています。(最近特別装丁で復刊されたようです!)
もうすぐクリスマス、川も運河も凍り、
子どもも大人もスケートで行き来するオランダを舞台にした物語、
古風で懐かしい。 


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南北戦争のころのアメリカ、1865年に出版され、瞬くまに子どもの人気を博した本だそうです。
季節は12月、オランダのこどもたちは、凍りついた運河でスケート遊びをしています。


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1918 Philadeliphia by Enright




貧しい兄妹ハンスとグレーテルも、家の手伝いの合間、つかの間の自由な時間を氷の上で楽しんでいます。 
父親は、10年前の落下事故で脳に障害を負って正気をなくし、
母を助けて、学校にも行けずに、稼いだり、家の手伝いに忙しい2人にとって、
スケートは唯一の息抜き。 
その父の病状はますます悪化、お母さんに危うく火をつけそうになるほど・・・



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1920 NY by A. Doggeti


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1915 NY by G.Wharton



一方、氷の上にはぴかぴかのスケート靴をはいた、裕福な家庭のきらびやかな子どもたちも滑りにきています。
そのうちの少年たちは冬休みに、川と運河をスケートですべってアムステルダムまで行く、大旅行を敢行します。 
有り金一切を落としたり、泥棒に出会ったりと、
災難にあいながらも、オランダの冬の風物とスケートの冒険を満喫します。


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1918 Philadeliphia by Enright




そして2人の兄妹の父親には、名医がおとずれて彼を脳の障害を直すため、
死の危険のある手術をすることを提案します・・・
最後に、銀のスケートが賞品にかかった、スピード・スケート大会で、物語はクライマックスを迎えます。


宮崎駿さんが選んだ岩波少年文庫50選のうち、どの物語がLibriVoxで聴けるか調べたときに、(このページ)
この本をはじめて知り、しかもLibriVoxに朗読があったので、さっそく聴きました。 
オランダのサンタクロースの風習や、オランダの冬景色がたっぷりのこの物語は、
秋が終わろうとする今、ちょうどいいタイミングで冬の予感を楽しめて、ぴったりでした。 


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1915 NY by G.Wharton



子どもの本としてはかなり早くに出た本だけに、ストーリーや登場する子どもの描かれ方は古風なのですが、
その懐かしい感じがいかにも子どもの古典らしくていい感じでした。 
全体として、古風な母親から見た、子どもの世界はこうあって欲しいという思い(!)が強く感じられるけれど、
それがお説教にはならず、スケートを楽しみながら吐く白い息の音が聞こえてくる感じで、
子どもたちを生き生きと描いていると思います。


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1918 Philadeliphia by Enright



しかも、この物語の作者は、アメリカの子どもに、オランダを味あわせようとサービス精神たっぷりで、
子どもの目を通して、オランダの名所に行き、オランダの英雄を語り、オランダの冬の楽しみを紹介します。
チューリップ投機にたくさんのオランダ人が夢中になり、大金持ちになったら、またたくまに多くが破産した逸話とか、
なかなか面白かったです。 
テレビの旅行番組が無い時代、こんな本が旅行番組みたいな役割で、異国情緒誘ったのだろうと思いつつ、
私もしっかりオランダに行ってみたくなりました(笑)。 
古い本の挿絵も、この通り、オランダの美しさを競うように描いています。


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1920 NY by A. Doggeti



この本の作者、Mary Mapes Dodgeはとても興味深い女性です。

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NYの学者の家に生まれて、優れた教育を受けたMaryは、二十歳で法律家と結婚し、二人の息子に恵まれます。 
ここまでは、期待通りの人生だったのでしょうが、夫は経済的な問題をかかえて、家を出てしまい、
一月後には、溺死体で発見されます。 30歳にならずして、2人の子どもをかかえた未亡人になったのです。 
まもなく、学者の父の助けをうけながら、彼女は雑誌に短編を書き始め、
その数年後にこの物語を書いて、大成功を収めることになります。 


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1915 NY by G.Wharton


その後彼女は雑誌の編集者として、活躍しました。
この時代は子どもの小説雑誌の黄金時代で、
彼女が初代編集者をつとめたSt. Nicholas Magazineは子ども雑誌でももっとも成功した雑誌となり、
その執筆者には、Louisa May Alcott (若草物語), Francis Hodgson Burnett (小公女),
Mark Twain (トム・ソーヤの冒険)Rudyard Kipling(ジャングルブック)などの有名作家が名を連ね、
彼女の編集によって、様々な物語が発表されました。
*上の()の中の本はそれぞれの作家の代表作、この雑誌に発表されたのは、小公子、ジャンブルブックなどです。


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1915 NY by G.Wharton



しかし、つくづく思うけど、この時代の女性はいかに恵まれた環境で育っても、
夫が突然の不幸にみまわれれば途端に経済的に苦境に陥り、多くの場合は貧困に陥った、
と女性にはなかなか生きにくい時代だったと思います。
この物語の主人公の兄妹の母親も、まさにその苦しい状況にあえいでいます。
でも、Maryはその苦境から社会的成功を成し遂げた、時代を先駆けた女性だったのだろうと思います。



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1915 NY by G.Wharton


この本の朗読は、Mark F. Smithさん、すでに引退されて今はLibriVoxのためにたくさんの朗読をしている方です。
サウスカロライナ州に住んでいらっしゃるとか、やわらかくて聴きやすい朗読です。
オランダ独特の名詞などがわかりにくいこともあるけれど、英語も素直でやさしいと思います。
クリスマスに向けて、何かクリスマスシーズンの雰囲気を楽しめる朗読を聴きたい方にぜひ、とお勧めします。

LibriVoxへのリンクはこちら


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1899 NY by Sdgyley




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コメント

こんにちは、Dill さん。  早速こちらへお邪魔しました。  Dill さんはロンドン郊外にお住まいなんですね。  KiKiも学生時代にはイギリスには何かとお世話になった身なので、Dill さんにはお目にかかったことこそなかったけれど、何となく古いお友達に出会ったような、郷愁に近いもの・・・を1人勝手に感じてしまいました(笑)。

たくさん挿入されていらっしゃる画像、どれもこれも素敵ですね~。  朗読のプログラムよりも前に、これらの画像に思わず見入ってしまいました。  これから他のエントリーも拝読させていただきますね♪  ま、何はともあれ、今後ともよろしくお願いいたします。  

kikiさんへ

こんにちは!
イギリスって、古い街や自然が残っているから、初めて訪れても懐かしいし、
小公子やシャーロックホームズを読んでいると、その舞台の匂いがして、なお懐かしいと思ったものでした。

私は、kikiさんのブログで、岩波少年文庫にいっぱい会って、勝手に懐かしく感じましたよ(笑)

アメリカのデジタル本の図書館で古い本のイラストを見られることがわかって以来、
イラストをみるのが病みつきです・・・
この本はきれいなイラストの本がダントツに多いですね。
ま、旅行案内ですから、イメージがないと盛り上がらないのかもしれませんねe-68

また伺いますので、こちらこそどうぞよろしく。

素晴らしい物語ありがとう

娘と、一ヶ月ぐらいかけて、やっと朗読最後まで、聴くことができました。一ヶ月は、高学年向けで、難しいだろう、と私が先に、ほぼ終盤まで読んでいたんですけど、やはり娘にも面白いだろうと確信して、また最初から、聴きはじめたからです。
ベッドでは、眠ってしまうので、スキーに向かうドライブ中に聞いてました。
Dillさんが、殆ど話の内容説明してますね!私もまるでオランダに観光でいる気分にさせてもらったし、歴史や、洪水のことなど、色々勉強になりました。その間にも、色んな事件が、たくさん起きて、本当に娘と一緒にはっと息を呑むほどびっくりしたし、どんでん返しも、すごく楽しませてもらいました。
単語も、殆ど調べなかったです。ただ、ドライブ中に、Stanzaから、テキストを読みながら運転してました。
テキストを見ないで、聞くのが本当に面白いやり方だと思いますし、日本語の本も購入したので、訳と、イラストを眺めながら、また再度聞くのが楽しみです。

全部、朗読聴いてみて、Dillさんの解説を読むのは、また勉強になります!
ドッジさんの、波乱万丈な人生も、ハンス家と重なって、、苦難を乗り越えているのが、なんだか希望を与えてもらえる作品ですね。
素敵な作品の紹介ありがとうございました。
Dillさんの、推薦にたよって、かめの歩みですが、また読書がんばります。

Re: 素晴らしい物語ありがとう

mellovemaさん、返事がすっかり遅くなってごめんなさい!

私はどうも地理が苦手で、英語名と日本語名がごっちゃになったりすることもあり、
オランダが、NetherlandsとHolland(英語通称)とよばれ、そしてオランダ人がDuchだという、
複雑な関係がぴんとこないんです。

それでデンマークがDanmarkで、人がDaneでペストリーがDanishだというと
なんだかごちゃごちゃしちゃいます(笑)
なんでこんなことを書いたかというと、最初この物語を聞いていて、
私の中でなぜか、デンマークだと思っていのを思い出したからです(笑)

くだらないことを書きましたが、紹介した作品をいっぱい聞いてくださって、
ありがとうございます。
いつも感想をうかがうのを、すごく楽しみにしています。
御嬢さんにも、どうぞよろしくお伝えくださいね!

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銀のスケート(ハンス・ブリンカーの物語) M.M.ドッジ

先日このエントリーでお話した内山節さんという方とその著作に興味をもった KiKi...

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Dill

Author:Dill
イギリスのロンドン郊外に住んでいます。 
本は大好き。読む本がなくなると落ち着きません。
とうとうまわりに日本語の新しい本がなくなってしまったので、英語の本を楽しみたいと思っています。

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