英語で本三昧

英語の朗読を聴いて楽しんでいます。 

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Alison Uttleyのもう一つの代表作が、ダービッシャーの農場にたずねて来た少女が、突然1500年後半のエリザベス一世の時代にタイムトラベルをする、不思議な物語です。時間を越えたであった、昔の人々への切々とした愛情が、うつくしく語られています。

A traveller in time


この物語でもやはり、ダービッシャーの丘に建つ、石造りの古い農場が舞台です。 
ロンドン、テームズ河ぞいの住宅地、チェルシーに育ったやや病弱なペネロピーは、兄姉と3人、母の叔母が住む、ダービッシャーの農場にあずけられて夏を過ごします。 
大叔母さんはこの農場が大昔からあり、エリザベス一世の時代には、地主のバビントン家が好んで滞在していたManor Houseだったと、昔物語をしてくれます。 ここに住んでいたバビントン家の当主は、幽閉されていたスコットランドの女王メアリを助けようとして、謀反の罪で処刑されたのよ、という大叔母の話しに、ペネロピーは強く惹きつけられます。


manor farm house
モデルとなったFarm House・Alisonは生家からこの家を眺めて育った


田舎の農場の生活にすっかり魅せられた3人ですが、ある午後、おばさんの用事を言い付かって、2階のベッドルームに入ろうとしたペネロピーは、見ず知らずの豪華な服を着た4人の女性が部屋の中でゲームをしているのに出くわし、仰天します。

あわててドアをしめてもとの廊下に戻ろうとすると、見慣れた廊下が、見たことのない廊下に続いています。驚いて、おばさんのいるはずの台所に行くと、そこは同じ台所でも、すっかり様子が違います。古風ななべやかまどを使って忙しく働くのは、おばさんに似ているものの、ずっと若い見ず知らずの女性で、しかも中世の服を着ています。
わけがわからず、立ち尽くすペネロピーを、この女性はロンドンの村からやってきた親戚の娘と一人合点して、親切にしてくれます。 やがて、ペネロピーは400年も前の農場に迷い込んでしまったに気づきます。

River.gif
Alisonの生家に近い川・ペネロピーも好きだった

農場には、見知らぬ建物が続き、地主のバビントン家の家族が滞在しています。 カードをしていた女性は、バビントン家の未亡人で、2人の息子がいます。 若当主の長男は、美しい妻がいるのに、政治に夢中になり、近くに幽閉されているスコットランドの女王、メアリ1世を、イギリスの正統な王家継承者として、熱心に崇拝しています。 ペネロピーは、偶然下の息子のフランシスと知り合い、当主がメアリ一世を幽閉先から救い出そうとする企みに係わっていることを知ります。

500年前の召使たちは、台所でいそがしく働きながら、主人一家についての噂話を交わします。 ペネロピーはメアリ一世が、エリザベス一世の命令で処刑されたことを知っているだけに、バビントン一家がメアリの逃亡を助けようとするのを、はらはらしながら見ています。 不幸な結末がやってくることを伝え、なんとか災難に巻き込まれるのを阻止しようとするのですが、一途なバビントンの若当主の熱心な話しを聴くうちに、ペネロピーもまたメアリを崇拝するようになります。

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Mary、Queen of Scots

この物語は、作者のAlisonの、古い農場に対する愛情が、ダービッシャーの古い歴史と風土と混ざり合い、ゆったりと発酵したような、豊かな香りと、存在感があります。 Alisonが知り尽くしたダービッシャーの風景と、中世のマナーハウスの生活の細かい描写の積み重ねが、印象的深い現実感を作っています。

とりわけ効果的なのは、ハーブの香りです。 中世の台所にはハーブの束がかけられ料理に使われ、寝室には香りを移すために月桂樹やローズマリーが撒かれ、貴婦人は薔薇やすみれの香りがします。 古い衣装は虫除けのハーブの香りがしみこみ、シーツはラベンダーの香り。 そして、ペネロピーが淡い恋心を抱くようになる若当主の弟と出会うのは、台所で使うハーブを摘みにいった、ハーブガーデンです。 物語の世界に、古風なハーブの香りがしみついている思いがします。

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ペネロピーも乗馬を楽しんだ・ダービッシャーの丘で

この時代の召使たちが働き、くつろぐ中世の台所の様子や、彼らが作る料理も詳しく語られ、読んでいると目の前に中世の台所の様子が浮かんできて、楽しかったです。 捨て子の少年が火の前でゆっくりまわし続ける串にさされたローストが、じゅうじゅうと焼け、大なべでシチューが作られ、ペネロピーはアーモンドの粉と蜂蜜を練って、色をつけ、農場のミニチュアのお菓子を作って、みんなを感心させたりします。

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Tudor Kitchin

そして、グリーンのドレスが大好きなペネロピーに、息子が歌ってくれる、グリーンスリーブスという古い唄も印象的で、メロディーがいつまでも残ります。

中世の昔の、なんでもない小さいことの詳しい描写を読んでいるうちに、この時代に不思議な現実感をもつようになりました。

この物語を読むのは、実は2回目で、数年前に読んだ時は、不思議な魅力を感じながらも、いまひとつ筋の流れがつかみきれないような気がしました。 

でも今回、この物語が描いている風景の中を歩いて、この物語がダービッシャーの風景に深く根付いていることに気づきました。 
また、この時代の、古いカトリックと新しいイギリス国教会との命をかけた激しい争いのこと、メアリ1世はスコットランドの女王でありながら、幼くして、文化的にはずっと洗練されたフランスに嫁いで、その文化を身につけて帰ってきた若き未亡人(イギリス人と2回再婚)であったことなど、イギリスの歴史を知るようになって、いっそうこの物語の流れに深みを感じるようになりました。知らなくても十分魅力的な話だけれど、イギリスの風土や歴史を知って読むと、さらにひきつけられる物語です。(スコットランドの女王メアリ1世については以前ここで紹介しました)

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ダービッシャーの丘の上の廃墟



ついでに家事の合間に、以前買ってきちんと聴いていなかった、短縮版の朗読をカセットで聞きました。 2時間という短さなのですが、うまくまとめられ、午後の短いひと時で、この物語の世界にじっくり浸れて、楽しかったです。
朗読している女性は、ちょっとハスキーな声で、ペネロピーのイメージとはやや会わない感じはしました。 でも、物語に登場するグリーンスリーブや、クリスマスのHolly and Iveyなど数曲歌ってくれるので、旋律がわからないまま本で読むのとは違う、生き生きとしたイメージがひろがりました。



日本語の訳は岩波少年文庫から出ています。

時の旅人


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Alison UttleyのThe Country Child
Alison Uttleyの Grey Rabbit

コメント

Dillさん!うれしいです^^

こんばんは♪かわいい子馬ちゃん、ダービシャーへ
いらしたのでしょうか?いいなあ^^Uttleyの世界ですね~。
川べりが やっぱり川べり、ですねえ・・・。
それにしても、すてきな おはなしです・・・奥が深そう♪
日本語も ご紹介ありがとうございます^^ぜひ 読んでみたいです。

うだきちさん、

コメントいただきながら、返事が遅くなってごめんなさい!
川べり、そう川っていいですねぇ。 この川は、両岸が緑が茂って歩けないけど、川べりの散歩は、夏の最高の楽しみですねぇ。
うだきちさんは、どっちかというと海の近くに住んでいるのですよね? 海もいいなぁ。 

夏の初めはわくわくしますね。 お嬢さんの初めての小学校の夏休みも近くなってきましたね。

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Dill

Author:Dill
イギリスのロンドン郊外に住んでいます。 
本は大好き。読む本がなくなると落ち着きません。
とうとうまわりに日本語の新しい本がなくなってしまったので、英語の本を楽しみたいと思っています。

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